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歯周病治療  〜世界の潮流を感じる  第105回アメリカ歯周病学会〜

今回は11月初旬にアメリカのシカゴで行われた第105回 アメリカ歯周病学会に参加してきました。

ちなみに日本歯周病学会は今年開催の学会が第63回でした。参加の目的は世界レベルの治療方法やトピックスについての情報収集をすること、普段とは異なる空気に触れて日頃の自分たちの臨床を見つめ直すことでした。そもそもアメリカと日本では医療制度が大きく異なります。日本には世界に冠たる「国民皆保険制度」があります。誰もが、一定の経済的負担のもとに必要レベルの医療を受けることができます。そのため、日本においてはどうしても医療保険を中心に論議がなされることが多くなります。しかし、一方で保険医療の水準は「最高水準の医療」ではなく「必要最低限の医療」であることは皆が知っておくべきことでしょう。このような背景もあるため、アメリカと日本では学会の雰囲気や内容もかなり視点が異なるものでした。

学会での話題の中心は歯周病治療そのものよりもインプラント治療や歯周形成外科手術に関するものが多くみられました。一般にアメリカでは歯科治療の費用が高額なため、弱ってきた歯に多くの治療を行うよりは早期に抜歯してインプラントなどに置き換えるほうが生涯医療費が安くなるという考え方があります。この辺りも日本とだいぶ違います。しかし、レーザーなどの新しい医療機器を用いた治療や成長因子などを用いた再生療法などは非常に活発に論議されており、企業展示も日本とは全く異なる規模でした。日本では日本で開発された再生療法「リグロス」が最近の話題となっていますが、アメリカ歯周病学会では全くと言っていいほど話題にのぼっておらず、これは少し残念でした。

共通点としてはやはり、メンテナンスを継続することが非常に大切であるということでした。歯周病は高血圧や糖尿病といったいわゆる生活習慣病と言われており、治療を行っても「完治」という概念で捉えることは難しいです。この点を患者さんにお伝えしていくことが私たち歯科医療従事者の責務であることは日本もアメリカも同じあると感じました。

他に、ここでは書ききれないような内容が盛りだくさんの学会参加でしたがいろいろと収穫もあり、今後の当院での治療にも取り入れていきたいことが見つかりました。今回は約3年ぶりの海外研修でした、できれば年に1回は海外の歯科医療にも触れる機会がもてるよう今後もありたいと思います。留守中、皆様にはご迷惑をおかけしました、ご協力いただき誠にありがとうございました。